熊本地方裁判所玉名支部 昭和46年(ワ)39号 判決 1977年6月28日
主文
一 被告は原告森一男、同国武ミツヨ、同丸山美代子、同小柳すま子、同木村覚、同山下藤男、同林司津夫、同市川伍市、同坂田始次、同中野三郎に対し、同人らのなした組合加入の申込をそれぞれ承諾せよ。
二 原告松田達幸の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告松田達幸と被告の間においては被告に生じた費用の一一分の一を同原告の負担とし、その余は各自の負担とし、その余の原告らと被告との間においては全部被告の負担とする。
事実
第一 当事者の求める裁判
一 原告らにおいて
(一) 被告は原告らのなした組合加入の申込をそれぞれ承諾せよ。
(二) 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 被告において
(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決
第二 当事者の主張
一 請求原因
(一) 被告は水産業協同組合法に基づいて設立された漁業協同組合である。
(二) 被告の定款は組合員資格に関して次の如く規定している(但し、体裁は原文のとおりではない。)。
1 第四条
この組合の地区は荒尾市大字荒尾(同四、六四二番地、同四、六四四番地を除く)、大字大島(同六九四番地を除く)、大字宮内(同一、五四六番地を除く)、大字宮内出目(同七八三番地を除く)、大字増永、大字一部および大字蔵満の区域とする。
2 第八条一項一号
この組合の地区内に住所を有し、かつ一年を通じて一二〇日をこえて漁業を営みまたはこれに従事する漁民は、この組合の正組合員となることができる。
3 第八条二項一号
この組合の地区内に住所を有する漁民で第八条一項一号に掲げる者以外のものはこの組合の準組合員となることができる。
4 第八条二項二号
この組合の地区内に住所を有しない漁民で、その営みまたは従事する漁業の根拠地がこの組合の地区内にあるものはこの組合の準組合員となることができる。
(三)1 原告木村覚以外の原告らはすべて被告の地区内に住所を有し、原告木村覚は被告の地区内に住所を有しない。
2 原告らは次のとおり年間一二〇日をこえる日数被告の漁業権区域において貝および餌虫等採捕の漁業を営みまたはこれに従事している。
原告 森一男………一五〇日
同 松田達幸………一三五日
同 国武ミツヨ……一四〇日
同 丸山美代子……一三五日
同 小柳すま子……一五〇日
同 木村覚………一八〇日
同 山下藤男………一五〇日
同 林司津夫……一三一日
同 市川伍市………一三〇日
同 坂田始次………一三〇日
同 中野三郎………一五〇日
3 従つて、原告木村覚以外の原告らは被告の正組合員となる資格を、原告木村覚は被告の準組合員となる資格を有する。
(四) 原告らはこれまで被告に対し加入の申込をしたが、被告はこれを承諾しない。
(五) よつて、被告に対し右の各申込に対する承諾を求めるために本訴に及ぶ。
二 答弁
請求原因に対し、
(一) その(一)の事実は認。
(二) その(二)の事実は認。
(三) その(三)の事実は争う。
(四) その(四)の事実は認。
三 抗弁
被告には次のとおり原告らの加入申込を拒否する正当な理由(水産業協同組合法二五条)が存在する。
被告の組合員は現在においてもすでに一、六〇〇名余の多きに達しており、被告の漁業権区域における漁業資源の減少等から現在以上に組合員を増加させることは現組合員が漁業によつて生計を維持することを困難ならしめる。このため、被告においてはすでに一〇年近く、組合員の分家に対してさえ新規加入を認めてこなかつたし、県当局からも組合員を整理減少するようにとの指示を受けている実情にある。
四 答弁
抗弁事実は争う。
被告の現組合員の中には公務員、医師、教育等他の職業に従事し、漁業に従事しない者も多数存在し、実際漁業に従事している組合員は四〇〇名程度にすぎない。また、毎年一〇月一日から翌年三月末日まで貝および餌虫を採捕する干潟漁業を禁止して行なわれる海苔養殖については被告は一部海苔養殖漁場を他地区民に貸与して収益をあげているのであるから、原告らの加入申込を拒否する正当な理由は全くない。
第三 証拠関係(省略)